Tuesday, June 12, 2012

ブドウ球菌による食中毒





黄色ブドウ球菌(Luria Agar 培地で一昼夜培養したもの)
Department of Biology, Furman University





                                  
黄色ブドウ球菌(走査電子顕微鏡写真,2万倍)

黄色ブドウ球菌による食中毒は,一見,農薬や毒物中毒と似て,摂取後すぐに
症状がでるのが特徴。


食品中で黄色ブドウ球菌(毒素を産生する株)が増殖する時に産生するエンテ
ロトキシンを、食品と共に摂取することでおこります。数時間後に激しい嘔気・
嘔吐、腹痛、下痢を伴う急激な急性胃腸炎症状がでます。

2000年(平成12年)6月から7月にかけて、近畿地方を中心に発生した、雪印乳業
の乳製品(主に低脂肪乳)による集団食中毒事件では,製造工程でエンテロトキシン
Aが混入した。認定者数14,780人。





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ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(新生児)

写真)皮膚に付着した黄色ブドウ球菌(Dennis Kunkel Ph.D., Dennis Kunkel 
---------- Microscopy, Inc. Kailua,HI)



写真)新生児のブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群の頚部皮膚の発赤と表皮剥離。


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ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群
--------------------------------------
黄色ブドウ球菌は子供のとびひ(伝染性膿痂疹),あせものより(汗腺膿瘍),

皮下膿瘍の原因ですが,これは少し変った毒素をだす黄色ブドウ球菌による
伝染性の病気です。

症状)新生児、乳児で目の周り、口唇周囲、首、腋下、そけい部などに小膿胞
ーーーがでてタダレ、その周囲の皮膚は真っ赤になります。しばらくするとそ
ーーーの周りの皮膚が,火傷のあとのようにぺローリと一皮きれいにむける病
ーーー気があります(写真)。 

病原体)医学用語ではSSSS(= Staphylococcal Scalded Skin Syndrome
ーーーー= ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)略して4Sといい、表皮剥離毒素を
ーーーーだす黄色ブドウ球菌によっておこります。メチシリン耐性黄色ブドウ
ーーーー球菌(MRSA)であることが多い。

感染経路)手洗いや部屋の消毒をいくら厳重にしてもこの病気の流行を食い止
ーーーーーめることはでません。黄色ブドウ球菌はヒトの鼻腔に住みついて

ーーーーーコロニーをつくり ヒト→ヒトへと感染伝播。成人は毒素に対して
ーーーーー免疫があるために発症しません。 新生児、乳児は免疫がないので、
ーーーーーこのブドウ菌のだすexfoliative toxin で皮膚の表皮剥離をおこします。


ーーーーーー写真)PCR法による表皮剥離毒素の遺伝子A, Bの検出。


山口大学医学部臨床検査部:水野先生

治療) 皮膚の消毒,分離された黄色ブドウ球菌に感受性ある抗生物質の投与
ーーーーで完治します。

医療従事者へ)気をつけて下さい。新生児のブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群
ーーーーーーーは小児科医からの集団感染例があります。

→ 1986年にロンドンの小児病院 Guy`s Hospitalで発生した新生児SSSSの
----アウトブレイクについての論文:Dancer SJ.,Simmons NA., Poston SM.,Noble WC:
----Outbreak of staphylococcal scalded skin syndrome among neonates .
----Journal of Infection 16:87-103,1988.



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ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群



写真:3才,ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群---------------
        (火傷の後のような頸部,顔面,耳周囲の皮膚発赤,水泡,ビラン)

黄色ブドウ球菌(20,000倍,走査電顕)

写真:3才。軽い火傷の後のように表皮が剥離して治癒中

写真:ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群。ビランした場所がカサブタ状
   になり治癒中---------------





ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群 ( Staphylococcal scaldid skin
syndrome )は表皮剥離毒素を産生するブドウ球菌が原因。
新生児,乳児によくおこり,年齢が長ずるにつれ感染しても
ほとんど発病しなくなります。

黄色ブドウ球菌は,それがMRSA(メチシリン耐性ブドウ球菌)であっ
ても,表皮剥離毒素を産生するブドウ球菌であっても,ヒトの皮膚だ
けでなく鼻腔に保菌します。
感染はヒトの鼻腔からヒトの鼻腔へと
伝播していきます。皮膚に消毒は容易ですが,鼻腔の消毒は盲点です。

子供のブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群の場合は,その母親,その兄弟
から新生児,乳児に感染して発病していますから,家族のヒトの鼻腔
の消毒,除菌をお忘れなく。 


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汗腺膿瘍

頭部の汗腺膿瘍
黄色ブドウ球菌(走査電顕,20,000倍)

夏に多発,乳幼児が罹ることが多かったのですが,家庭でのクーラーの
普及とともに激減しました。黄色ブドウ球菌が汗腺,エクリン線で増殖
するためにおこります。


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伝染性膿痂疹(とびひ)



写真)とびひ(伝染性膿痂疹), 消毒薬イソジンで茶褐色になってます


皮膚症状: 最初は虫さされ様のものが,数日で体の各部に散らばり
----------------コイン大の大きさに拡大してビランを生じます。
-----------------かゆみが強い為に爪で引っ掻くことで感染拡大します。
季節  : 夏
罹患年齢: 乳幼児がとくに多い
病原体 : 黄色ブドウ球菌(多い),溶血性連鎖球菌(少ない)





黄色ブドウ球菌(20,000倍,走査電顕写真)

        皮膚に付着した黄色ブドウ球菌の電子顕微鏡写真。色はーーー      ーーーーーー人工着色 してあり,本当の色ではありません( Dr. Dennis Kunkel )

治療  :皮膚を清潔にして消毒し,抗生物質含有の軟膏を塗布
-------------抗生物質を内服しないと,さらに広がります。


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Monday, June 11, 2012

レジオネラ菌

レジオネラ・ニューモフィラ菌:患者喀痰のグラム染色
(1976年フィラデルフィアのホテルで集団発生したもの--- Public Health Image Library, CDC)
ジオレラ・ニューモフィラ菌のコロニー(矢印)
BCYE培地---------- Public Health Image Library, CDC)
ジオレラ・ニューモフィラ菌:鞭毛がある電子顕微鏡 1,5000倍)
                               ---------------- Public Health Image Library, CDC

レジオネラ菌:グラム陰性桿菌で細胞内寄生菌。数十種類以上ある。
ーーーーーーーLegionella pneumophiliaジオレラ・ニューモフィラ)が最も多い。


感染経路:レジオネラ菌は河川,土壌に存在する常在菌。この菌に汚染された温泉,
ーーーーー浴槽,噴水,空調設備に用いる循環水,給水施設,加湿器などから
ーーーーーエアロゾルとして吸入。人から人への感染はない。
潜伏期間: 2~10日


病気の種類:老人,免疫不全患者におこり,健康小児では感染しても症状がでない。
ーーーーーー1)肺炎(Legionnaires' disease 在郷軍人病):
ーーーーーー2)ポンティアック熱( Pontiac fever):突然の発熱、悪寒、筋肉痛 
ーーーーーーーーー        で始まるが、一過性で治癒する。
患者の隔離:必要なし。

日本における主なレジオネラ感染例 :
1996年1月 東京都新宿区の大学病院で、新生児3名が発症し、うち1名が死亡。
ーーーーー加湿器が感染源と考えられた。
2000年3月 静岡県の複合レジャー施設内の温泉。23名が発症し、うち2名が死亡。
2000年6月 茨城県石岡市の入浴施設。143名が発症し、うち3名死亡。
2002年7月 宮崎県日向市の温泉入浴施設。295名が発症し、うち7名が死亡。
2002年8月 鹿児島県薩摩郡東郷町 の温泉施設。9名が発症し、うち1名が死亡。
2007年10月 新潟県新潟市で超音波式加湿器が感染源となり、男性1名が死亡。

Legionnaires' disease 在郷軍人病:1976年フィラデルフィアのホテルで開催された

ーーーー在郷軍人会への参加者と周辺住民221人が原因不明の肺炎にかかり、治療
ーーーーにも関わらず34人が死亡した。毒物テロなども疑われたが,1977年に
ーーーーCDCのJoseph E McDade (左)とCharles C Shepard(右)が菌を分離した。





ーーー発見された細菌は在郷軍人 (legionnaire) にちなんで Legionella pneumophila 
ーーーと名づけられ,病気は在郷軍人病 (legionnaire disease) と呼ばれた。
ーーー会場近くの建物の冷却塔から飛散したエアロゾルに起因していたとされている。

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