を使用したい旨連絡がありました(8月31日放送)。
今年は,マイコプラズマ・ニューモニエ (肺炎マイコプラズマ Mycoplasma
pneumoniae) 感染症が流行しています。これについて少し詳しく説明します。
出典は 萩原啓二.マイコプラズマ,小児科臨床ピクシス20,かぜ症候群
と合併症,p128〜130,2010年8月発行,中山書店。
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マイコプラズマ感染症
1)病原体
マイコプラズマ・ニューモニエ(肺炎マイコプラズマMycoplasma pneumoniae)
2)疫学
◯ヒトが感染源。動物の宿主は知られていない。飛沫感染で濃厚接触が必要,
家族内発生が多いのはそのためである。
◯季節は秋〜冬〜春に多い。
◯罹患年齢:小学生(特に7〜9才にピーク)中学生に多発し1才以下は少ない。
3才以下の小児では不顕性感染が多いと言われているが,各年齢層
での顕性感染率,不顕性感染率を詳しく調べたデータはない。
アメリカでは大学生,軍隊での発生が多い。
◯日本ではオリンピックの開催年に流行をくりかえしていたが,1992年以降から
4年周期性はなくな
ってきた。
◯潜伏期間が約2〜3週間なので,インフルエンザウイルスのように短期間に
幼稚園,小学校で患者が集中発生することはない。地域での流行は
数ヶ月かけておこる(smoldering epidemic くすぶり流行)。
3)臨床症状と診察所見:
a)急性上気道炎:初期は他の病原体のものと区別がつかない。咽頭発赤はない。
日常臨床ではこの病型をとるのが多いと思われるが,風邪としてマクロライド系
抗生剤が処方されそのまま軽快する。小学生1名がこの菌による肺炎になった場
合そのクラスには4〜5名の急性上気道炎の患者が発生している可能性がある。
マイコプラズマ感染では咳はひどいが通常は喘鳴はない。気管支喘息をしばしば,
誘発するので注意したい。
では乾性ラや呼吸音の減少を認めることが多いが,湿性ラ音もある。聴診所見が
はっきりしないのに胸部X線で浸潤像(スリガラス状陰影,図1)を認めること
がある。
胸部X線上の陰影の大きさの割に患児が元気であるのが特徴。皮膚に不定形発疹
をみることがある。白血球数は正常,軽度の増加ないし減少で一定しない。CRP
は軽度陽性。寒冷凝集反応は陽性となるが特異的ではない。AST 、ALT の上昇
を一過性に認めることもある。胸膜炎,胸水貯留のある症例は高熱がつづく。
セフェム系抗生物質を3日以上内服しているのに解熱せず咳がひどくなり,
白血球数の増減もそれほど強くなくCRPは弱陽性,胸部X線所見の割には患児は
元気である症例はマイコプラズマ肺炎を疑う。
図1。左肺のすりガラス様陰影,11才,女, 第5病日
2月11日 夕方から39度の発熱。翌日近くの小児科を
受診し薬をもらうが,その後も高熱つずき,
咳がひどく(特に夜中)なってきた。
2月15日 当院を受診。胸部(左)で乾性ラ音(+)。
白血球数5,300。CRP1.43mg/dl,ESR 36mm/hr.
胸部X線写真で左肺に均一陰影(+)
ーーーー 大学病院へ紹介し入院。
2月22日 退院。
右上肺の陰影,6才,男,第6病日
マイコプラズマ感染症のまれな合併症としては、急性脳炎,無菌性髄膜炎,中耳炎、
肝炎、膵炎、溶血性貧血、心筋炎、関節炎、ギラン・バレー症候群、スティーブンス・ ジョンソン症候群などがある。
4)検査:
a)間接赤血球凝集反応(Indirect hemagglutination=IHA):
マイコプラズマ抗原で感作したタンニン酸処理ヒツジ赤血球溶液に被検血清
を加えた後の血球凝集の有無で判定。主としてIgM抗体とIgG抗体を反映している。
4)検査:
a)間接赤血球凝集反応(Indirect hemagglutination=IHA):
マイコプラズマ抗原で感作したタンニン酸処理ヒツジ赤血球溶液に被検血清
を加えた後の血球凝集の有無で判定。主としてIgM抗体とIgG抗体を反映している。
現在は一部の研究室以外は使用されない。
b) 粒子凝集法(Particle agglutination=PA法)
ヒツジ赤血球のかわりにゼラチン粒子(セロデア-MYCOII®)を使用した方法。
原理はIHAと同じだが凝集が明瞭,溶血の影響をうけず感度がよい。
第5病日以内での採血では抗体価が上昇しない。抗体価は第15〜21病日で最高
となり,その後数ヶ月かけて低下する。患児の採血病日に注意したい。
b) 粒子凝集法(Particle agglutination=PA法)
ヒツジ赤血球のかわりにゼラチン粒子(セロデア-MYCOII®)を使用した方法。
原理はIHAと同じだが凝集が明瞭,溶血の影響をうけず感度がよい。
第5病日以内での採血では抗体価が上昇しない。抗体価は第15〜21病日で最高
となり,その後数ヶ月かけて低下する。患児の採血病日に注意したい。
診断基準(PA法):
ーーーー抗体価の表記法は×40倍以下,×40, ×80,×160,×320,×640, ×1280,×2560,
ーーーー×5120, ×10240 ------- である。ーーー
ーーーi) ペアー血清(急性期,その2週間後の回復期)で4倍以上。
ーーーi) ペアー血清(急性期,その2週間後の回復期)で4倍以上。
ーーーーーーーーーーーーー 例:急性期×40以下 → 回復期×160。
ii)単1血清では×320〜640倍以上。ただし過去に同菌に罹患したあと6ヵ月
後も×320倍以上の抗体価を示す患児もいるので,単一血清の高い値だけ
では今回の病気の起炎菌であるとは判定できない。やはりペアー血清が
望ましい。
我が国ではマクロライド耐性菌が2000年初頭より認められ,耐性率が増加して
きている。ただし耐性菌感染でも,感受性菌に比較して2〜4日ほど発熱の遷延が
みられるだけであり,日常臨床上でも重症化率が増加している傾向はない。
現在の第一選択はマクロライド系抗生物質である。
経口薬:エリスロマイシン:DS/200mg錠 20〜40mg/kg/日,分4。
リカマイシン:DS/100mg錠 20〜30mg/kg/日,分3。
クラリスロマイシン:DS/50mg錠/200mg錠10〜15mg/kg/日,分2〜3。
アジスロマイシン:細粒 10mg/kg/日,分1で3日間。
注射薬:クリンダマイシン: 8〜16mg/kg/日,分3〜4。
ミノマイシン:2〜4mg/kg/日,分2。
耐性菌に有効なもの:
ミノマイシン細粒(MINO): 2〜4mg/kg/日,分1〜2。8才以上に使用。
スパロフロキサシリン,レボフロキサシン:小児への適応なし。
6)感染制御
抗生物質の予防内服は家族内感染防御に有効との報告もあるが,ルーチンに推奨は
されていない。ただし鎌状赤血球症,ダウン症,免疫不全症,慢性心臓呼吸器疾患
をもつ患児の場合は予防内服が必要。
文献
1) 萩原啓二ほか.F小学校で集団発生したマイコプラズマ・ニュ−モニエによる急性呼吸
器疾患の調査. 第99回日本小児科学会総会. 1996.4.21.熊本.
2) 岡崎則夫ほか. Mycoplasma pneumoniae感染患者におけるM.pneumoniae分離と
IHA抗体価. 感染症学雑誌1989; 63:714−719.
3) 加藤彰一. 半定量解析によるイムノカードマイコプラズマ抗体キットの有用性の評価.
小児感染免疫 2007;19:27-35.
4) 成田光生.薬剤耐性マイコプラズマの現状と今後の展望.モダンメデイア2007;53:
297-306.
〒755ー0097
山口県 宇部市 常盤台1丁目20−2
上宇部こどもクリニック 萩原啓二
電話: 0836-29-1155
Fax: 0836-29-1156
E-mail: keijihagiwara@gmail.com
ii)単1血清では×320〜640倍以上。ただし過去に同菌に罹患したあと6ヵ月
後も×320倍以上の抗体価を示す患児もいるので,単一血清の高い値だけ
では今回の病気の起炎菌であるとは判定できない。やはりペアー血清が
望ましい。
c)迅速診断キット:血清中のIgM抗体を酵素抗体法で測定するキット (イムノカードマイコプラズマ抗体®)が市販されている。定性反応で15分
で判定できる。ただしPA法を基準とした場合,感度95%,特異度43.5%,
陽性反応的中度44.2%,陰性反応的中度94.9%,有用度60%で信頼性に欠ける。
d)咽頭スワッブを使用しての分離培養,あるいはPCR法でMycoplasma pneumoniae
特異的DNA検査は一部の地方衛生研究所と研究機関で実施。
ただしマイコプラズマ感染には不顕性感染がある。さらに抗生物質で治療をう
け治癒した後も数ヶ月以上にわたり患者の咽頭から菌が分離されることがある
ので留意。
5)治療け治癒した後も数ヶ月以上にわたり患者の咽頭から菌が分離されることがある
ので留意。
我が国ではマクロライド耐性菌が2000年初頭より認められ,耐性率が増加して
きている。ただし耐性菌感染でも,感受性菌に比較して2〜4日ほど発熱の遷延が
みられるだけであり,日常臨床上でも重症化率が増加している傾向はない。
現在の第一選択はマクロライド系抗生物質である。
経口薬:エリスロマイシン:DS/200mg錠 20〜40mg/kg/日,分4。
リカマイシン:DS/100mg錠 20〜30mg/kg/日,分3。
クラリスロマイシン:DS/50mg錠/200mg錠10〜15mg/kg/日,分2〜3。
アジスロマイシン:細粒 10mg/kg/日,分1で3日間。
注射薬:クリンダマイシン: 8〜16mg/kg/日,分3〜4。
ミノマイシン:2〜4mg/kg/日,分2。
耐性菌に有効なもの:
ミノマイシン細粒(MINO): 2〜4mg/kg/日,分1〜2。8才以上に使用。
スパロフロキサシリン,レボフロキサシン:小児への適応なし。
マイコプラズマ肺炎で左記の抗生物質で治療するも発熱し咳がひどくなる場合は
胸膜炎ないし胸水貯留があるかどうかを確かめる。耐性菌の問題もさることながら
発熱がつづく原因で,ステロイド剤の内服を短期間おこなうことで軽快する。
胸膜炎ないし胸水貯留があるかどうかを確かめる。耐性菌の問題もさることながら
発熱がつづく原因で,ステロイド剤の内服を短期間おこなうことで軽快する。
6)感染制御
抗生物質の予防内服は家族内感染防御に有効との報告もあるが,ルーチンに推奨は
されていない。ただし鎌状赤血球症,ダウン症,免疫不全症,慢性心臓呼吸器疾患
をもつ患児の場合は予防内服が必要。
文献
1) 萩原啓二ほか.F小学校で集団発生したマイコプラズマ・ニュ−モニエによる急性呼吸
器疾患の調査. 第99回日本小児科学会総会. 1996.4.21.熊本.
2) 岡崎則夫ほか. Mycoplasma pneumoniae感染患者におけるM.pneumoniae分離と
IHA抗体価. 感染症学雑誌1989; 63:714−719.
3) 加藤彰一. 半定量解析によるイムノカードマイコプラズマ抗体キットの有用性の評価.
小児感染免疫 2007;19:27-35.
4) 成田光生.薬剤耐性マイコプラズマの現状と今後の展望.モダンメデイア2007;53:
297-306.
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ご質問は: 〒755ー0097
山口県 宇部市 常盤台1丁目20−2
上宇部こどもクリニック 萩原啓二
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